私って結構図太いのかしら。
昨日は広くて落ち着かないお風呂に入り、大きくてこれまた落ち着かないベッドに横になった。
寝付けないかも、なんて不安は一瞬にして消え去り、気づけば朝。



すっかり寝入ってしまったみたい。
なんてこと。



「…着替えなきゃ」



今日も学校はある。
ここからだとどれくらいかかるんだろう。
わからなくて早めに起きた。
行き方も調べとくんだった。
バス近くを通るかな。



「紗千お嬢様。おはようございます」

「え、あ、はい。おはようございます!」


ノックの音とともに聞こえて来たのは、伊永さんの声。
お嬢様だなんて。
やめてって言ったのに。



「あの、伊永さん。その呼び方も…」

「今日より、紗千お嬢様は幸子お嬢様の代わりですので」




幸子。
それが娘さんの名前かな。
恭しくそう言われ、この人も雇われてる人なんだと思うと何も言えなくなる。
私って、ほんと情けない。