「…わかりました。すぐに行ってまいります」
苦渋の表情を浮かべ、竜が私を一度見やると悔しそうに背を向けた。
大丈夫かな、竜。
最近難しい表情の竜しか見ていない。
もともと表情が豊かではなかったけれど、最近は一層と険しい。
なんだか宇都木社長と、因縁でもありそうな。
そりが合わないんだろうな。
宇都木社長と会う人なんているのか疑問だけれど。
「つかえん男だ」
「その言い方はあんまりです。竜は仕事を忠実にこなしていると思います」
「お前は余計なことを考えずボロが出んように気を付けるんだな」
本当に、いけ好かない人だ。
大嫌い。
こんな人が父親だなんていくらお金持ちだとしても、幸子お嬢様に同情するわ。
ああ、貧乏でよかった!
心の中で、べーっと舌を出した。