私はとっさにその男を追いかけていた。
離れてはだめだとか、なにかあったら呼んでだとか、久住さんの忠告もすっかり忘れて。
確かめなきゃ。
本当に犯人なら、逃がしてはダメだ。
これ以上好きにはさせない。
捕まえて、ちゃんと償わせるんだ。
「ちょっと待って!」
その男が私が気づいたことに気づくのに遅れたおかげで、階段の途中で男を捕まえた。
「あなた!この間オートバイで…!」
「放せっ!」
追求しようとしたその時、男が思いきり腕を振る。
私の身体は思い切り揺れ動かされ、バランスを崩した。
「キャ!」
ガタタタタっ!!
私は数段の階段を踏み外し下に落ち倒れこんだ。
その隙を見て、男が私の横を通り過ぎ階段を駆け下りていく。
待って…!!
追いかけたくても、足首の痛みに声も出ず私は蹲った。
「大丈夫!?」
気づいてくれた近くを通った看護師さんが駆け寄ってくれた。


