吉沢さん、海に行く前にも私に対してあまりよく思っていないようだった。
それは、私が気に入らなかったからだったんだ。

その理由は、竜の事が好きだから。
竜の事が好きだから、竜を振り回す私の事が気に入らないんだ。



久住さん、仕事の話って言っていた。
やっぱり、宇都木を狙った者の仕業だったんだろうか。



私には教えてもらえない。
私は無関係だから。
護られる側だって、知る権利はあるんじゃないの。




たかだか身代わりだもんね。




荒んだ気持ちになりながら扉の前で立ちすくむ。





「え……」



その時。
ふいに視界の隅に人影を見つける。
その姿には、なんとなく見覚えがあった。
どこだろうか。

記憶のどこかに在るはず。



そう。
それは。




あのオートバイの男!
顔の中心当たりしか見えなかったけれど、衝撃的で目に焼き付いているあの顔によく似ていた。