「押した人物を見ましたか?」
「い、いえ、突然で…」
私は、竜の側に寄り添い手を握りながら、その様子を聞く。
誰かが、故意に…?
私を幸子お嬢様だと思って?
この間のオートバイの男と関係があるのかしら。
「どうしよう…、ごめんなさい…、ごめんなさい、竜…っ」
出かけるべきじゃなかった。
きっと私のせいだ。
優しさに甘えて、自分の楽しみのために竜をこんな目に。
救急車のサイレンの音が聞こえ始め、すぐにやってきた救急隊員によって、竜は救急車に乗せられた。
私もそして押された女の人も念のため病院に運ばれることになった。
私は竜と同じ救急車に乗せてもらい病院まで向かう。
久住さんたちは警察の人に事情を話、後処理をしてから向かうとのこと。
私は少し心細い思いを感じながらも、竜がどうか無事でとそれだけを願いながら救急車に揺られた。


