嘘みたい。まさか、あのあの井口くんと帰れるなんて。

「井口くん、あのね、ありがとう!あと…
井口くん、大好きです。」

うれしくて、つい思ったこといっちゃった。

「はいはい。ねぇ道教えてくれないとわからないんだけど」

「あ、ゴメンね。それを右です。」

なんか沈黙が続いているのは気のせい?
あれから井口くん、全然話してくれないし、話したと思ったら
道を聞くだけだし。

私は心の中で小さくため息をついた。
それからというもの、私たちのあいだに会話はないわけで。

あっという間に家についてしまった。

「えっと…今日はありがとう。肩濡れてない?」

私は濡れてないか心配で、井口くんの肩をみた。

「井口くん、肩濡れてる。ゴメンね」

私は制服のポケットからハンカチを取り出して、
井口くんの肩をふいた。

「別に、大丈夫だから」

「でも…」

「じゃあ、今度の日曜日、つき合って。本買いたいから。
駅前10時、集合な。来なかったらお仕置きだから。わかった?」

「えッ!」