次の日真也が車で迎えに来てくれた。


九条corporationのホテルへ向かう。


どうか、智哉に会いませんように。


一週間、智哉からの連絡を無視続けてのだから、智哉は呆れて口も聞きたくないと思ってるはず。


それでいい。


智哉には彼女がいるのだから。


ホテルで用意されたドレスを着て、髪もお化粧も全てホテルのスタップがやってくれた。


私は着せ替え人形のようでに、されるがまま。


鏡に写る私ではない私。


どんなに着飾っても、私はお姫様なんかになれない。


「智哉、落ち着け。」


部屋に智哉が飛び込んで来た。


「何やってるんだ。真也と結婚するつもりなのか。」


何も答えられず立ちつくす。


「俺がこの10年どんな思いでいたと思ってるんだ。麻都佳は俺が嫌いなのか。真也を好きになったのか。」


「だって、智哉には彼女がいるんでしょ。私のことなんて好きでもないくせに。」


智哉が分からないような顔をするけど、真也と話してたのを聞いた。


智哉には彼女がいるとはっきり聞きました。


「なんで、そんな悲しい顔をするのよ。泣きたいのは私なのに。」


「二人とも落ち着け。今日は俺と麻都佳の婚約発表なんだぞ。」


「婚約発表はさせない。」


なにするつもり。


離しなさいよ!


智哉がいきなりお姫様抱っこをするから、暴れた。


「下ろして、智哉のバカ。」


「智哉、落ち着いて話せば分かるから。」


智哉は無言のまま、お姫様抱っこをした私を車へ押し込んだ。


痛いってば。


離しなさいよ。


誘拐は犯罪だから。