ここまで来れば追ってこないか。


走るのは得意だけど、こんなに走ったのは久しぶりだった。


あれ、隣にいたはずの智哉がいない。


息を切らした智哉が私に追いつく。


「速すぎ。俺は30だから、無理だ。」


「捕まって監禁されたいの。」


「それはやだ。」


家には帰れない。


小澤さんが真也に執着する理由は何。


いくら我が子同様に真也が可愛いとしても、智哉に対する態度が酷すぎる。


「俺が小澤を信用していないからだと思うよ。九条corporationの専務をしてるのが、小澤の息子。多分、真也を上手く使って、自分の子供を社長にしようとしてるんじゃないかな。」


何それ。


自分の子供を社長にしたい為に、真也を上手く使うだなんて。


本当にバカにしてるわ。


真也も騙させれてる事に気づきなよ。


「真也は分かってると思うよ。」


分かっていて騙させれてるだなんて、理解不能。


悪いけど私は智哉と真也のどちらとも結婚はしない。


それだけははっきり言える。


なのに、智哉は麻都佳は俺と結婚したくなると思うよ。


さらりと言った。


なんで、どうして、そんな事になるのか。


絶対、結婚しません!


それより家に帰れないことを考えないといけなかった。


お金もないし。


どうしよう。