「着いたよ。」
「ここ?」
「そう。丸ちゃんの家だ。」

大きい3階建ての家…の隣にある、一軒家。
そこが心絆の家だった。

「隣のお屋敷は?」
「俺ん家。」
「お隣さんだね!」

小さいように見える心絆の家だが、1人で暮らすには大きすぎる家になっていた。

洋風建築になっていて、玄関がとても広くなっている。

1階にはリビングの他に部屋が2つ。
2階には部屋が1つとバルコニーがあった。

「俺が頼んで、設備は完璧にしておいたよ。」
「ありがとう!」

2階に繋がる螺旋階段途中で、歩と心絆は、人とばったり会う。

高校制服を着崩した、男の子だ。

「あ、真紘!」

真紘と呼ばれたその高校生は、歩の弟だ。
午前中の授業終わり、早く帰ってきたところ兄に捕まえられ、清掃をしていたのだ。

「歩兄、バルコニー綺麗にしといた。部屋の中はまじでしなくていいの?」
「いいんだって。それより、この子!!」

歩は、心絆の肩に手を置いた。
ビクッと肩が跳ね上がる。

「この子が、友だちの丸瀬心絆ちゃん。」
「ちっす」
「弟の真紘」
「こんにちわ」

自然に、心絆が手を出す。
握手を求めているようだった。

「よろしく」
「こちらこそ!」

まだぎこちない2人だが、なんとなく挨拶を交わすことが出来て、歩はホッと胸をなでおろした。

久々に、真紘が素直になっているのに、歩は笑顔を見せた。
普段、思春期のせいもあってか、さらに反抗的だ。

「真紘、俺は荷物手伝うけどどうする?先に風呂行くか?」
「あぁ、風呂さき。今日は一緒に食うんだろ?」
「そ。また逃げんなよー!」
「うっせ。俺の勝手だろ。クソ兄貴に言われたかねぇんだよ。」

それだけ残すと、真紘は階段を降りていった。

「いやぁ…お恥ずかしい。」
「ほんとに…変わっちゃったんだ。」
「…うん……」

2人の会話は、真紘には聞こえなかった。