そこには小枝を集めているはずの香菜美がいた。


香菜美は大きな石を両手に持ち、乃愛の前に立っている。


香菜美が石を頭上に掲げ、ジッと乃愛を見つめてる。


その光景に、俺は持っていた薪を落としてしまった。


薪が落ちる大きな音がしたのに、香菜美は気が付かない。


俺は香菜美へ向けて走っていた。


何をするつもりかわからないけれど、その雰囲気から悪い予感がした。


香菜美が乃愛の顔面めがけて石を振り下ろす。


その瞬間、俺は香菜美の体に体当たりをしていた。


香菜美の体が横倒しに倒れ、持っていた石は乃愛の真横に落下した。


「なに……してんだよ」


俺は倒れた香菜美を見おろしてそう言った。


少し走っただけなのに、ひどく呼吸が乱れて肩で息を繰り返す。


「ごめんなさい……」


香菜美が俺から視線をそらし、弱弱しい声でそう言った。