首を切って自殺した後、香菜美の死体がどうなったのか俺は見ていない。


灰になった様子も見ていないし、消えた様子も見ていない。


不意に、骨人間たちを思い出していた。


儀式が行われる森にいる沢山の魂。


それは戦争で亡くなった人たちだと聞いたが、本当にそれだけなんだろうか?


「香菜美をもう1度蘇らせることってできるのかな?」


乃愛に聞かれて、俺は我に返った。


「それは無理だ」


「どうして?」


「あのノートに書いてあったんだ。人を蘇らせることができるのは1度まで。同じ人間に儀式を2度行った場合、蘇った人間は自我を失い、周囲の人間を襲い始めるって」


「そうなんだ……」


乃愛は悲しそうに目を伏せた。


香菜美のせいで大変な目にあったのに、乃愛は香菜美のことを蘇らせたいと考えていたようだ。


俺は乃愛の手を強く握りしめた。


「行こう。俺たちはもう前を向いて進まなきゃならないんだ」


そう言い、俺たちはまた歩き出したのだった。