香菜美の叫び声がどこか遠くて聞こえてきているような感覚だった。


やっぱり、この女だった。


有ろうことかこの女は骨人間が目覚めるように歌詞を変えて歌っていたのだ。


だけど、怒りや悲しみは湧いてこなかった。


俺は乃愛の為に命を捧げる。


そう決めてしまうと、もう怖いと感じるものはなにもなかった。


「乃愛、創吾について逃げるんだ」


香菜美の叫びにかき消されそうになっていたけれど、俺は唸り声を聞き分けていた。


まだ遠いけれど、香菜美の声によって惹きつけられるかもしれない。


俺たちの居場所は相手にバレてしまっている。


「ダメだよ幸弘。あたしが死ねばすべてが元通りなんだから」


乃愛は目に涙を浮かべてそう言った。


その涙を指先で拭ってやる。