「念のため、音楽をかけよう」


そう言い、流行の曲を流しはじめた。


音楽なんて聞いたい気分じゃなかったあたしは、あからさまに顔をしかめる。


「野生動物を近づけないためだよ」


「野生動物を?」


「あぁ。人間がここにいると知ったら近づかないんだ。そのための音楽だよ」


カケルの説明にあたしは曖昧に頷いた。


このくらいの事で本当に野生動物を追い払う事ができるのか、あたしは知らない。


それでも今はカケルの言葉を信じて、森を歩いて行くしかなさそうだった。