森の中は相変わらず薄暗かった。


小屋から出て道に戻り歩いて行く。


その先にみえるものは木々ばかりで出口はまだまだ見えてこない。


「歩いてるとまるで別の世界みたいだね」


香菜美が誰ともなくそう言った。


車で見た景色と歩いてみる景色は確かに違う。


道があっても迷い込んでしまう気持ちはよくわかった。


この道がどこまで続くかもわからず、永久に出られないのではないかという恐怖が襲い掛かって来る。


その時、乃愛が俺の手を握りしめて来た。


小さくて柔らかな手に胸の中が暖かくなる。


「幸弘、ほんとうにありがとう」


「なんだよいきなり」


「だって、こうしてまたみんなと会話ができるようになるなんて、思ってなかった」