「はよーっす!おっひさ〜!」

ザワつく学校内

新しい学年になって初日だからかな?
三学期終わってそんなに時間たってないのにな。

(あ〜…うるさい…)

そんなことを考えながら教室に向かう私の名前は風間 蓮(かざま れん)

ある工業高校に通う、男勝りで元気が取り柄の女子!

私が通う工業高校は3つの専門学科に分かれていて、私はそのうちの一つである機械科で勉強中。

3年間のうち、2年、3年とクラス替えはないので、去年と全く同じクラスメイト。
なかなかつまらない学校生活だと思いがちだけど、これはこれでなかなか楽しめる学校なのだ(笑)



「蓮、おはよう。」

声をかけてきたのは同じクラスの草元 亮介。
わたしの大切な友人で元恋人。

「おっす。おはよ。」

私はぶっきらぼうに返事を返す。

ただ、私は男子が嫌いだった。
少し昔のことがフラッシュバックするようですごく怖かった。

今の友達はそんな事しないって信じたい。信じたいけど、信じることが出来なくなっていた。要するに人間不信。
それに気づいたのは高1の最後の方だった

人間不信になってからと言うもの、周りの視線や言葉が気になって、内心怯えていた時

「周りの言うこと気にしたらあかんで。」

亮ちゃんが小さな声で励ましてくれる。

「うん…。ありがと…。」

上手く笑えず、小さくお礼を言う。




私の日常。それは私が小学3年生の半ば頃変わり始めた。

遡ること9年前…

私は小さい頃から思った事や、間違えてる友達の事などをオブラートに包むわけでもなく、実際にあった事を単刀直入に言ってしまうことが多々あった。

そのせいで私は嫌われ、いじめの対象になってしまったのだと思う。

それが小3の半ば頃。私はいじめの対象になっている事を知らなかった。

私が気づいたのは3年生の終わり頃。
それまで友達に声をかけると気付かないふりをして通り過ぎて行ったり、自分の友達の名前を呼びながら走ってそっちに行ってしまう。
チラチラとこっちを見ながらクスクスわらわれたり…

そんな事が日常になっていた。


でも、今思えば私にも非はあったと思う。高圧的な言い方をしてしまったり、節約の為とはいえ、2日程お風呂に入らなかった事などを素直に言ってしまい、汚いと言われ始めたのがいじめの原因だった。

最初はそのいじめにもちゃんと対抗していたけど、私もだんだんと何も言わなくなっていった。
それからというもの、クラスの女子からは聞こえるように陰口を言われるようになり、男子からは暴言を言われ、たまに暴力。

ある日のこと。
私はいじめっ子とぶつかってしまった。

(まずいっ…)

「ご、ごめんなさい!」

咄嗟に謝るも、いじめっ子は許してはくれなかった。挙句の果てには

「うわ、風間とぶつかった!きったね!そーれ!!!」

と、投げる真似

「うわ!やめろよ汚い!」

「やだ!やめて〜(笑)
私まで風間菌うつる!せっかくの服が汚れんじゃん(笑)」

小学生あるあるのいじめが始まった。

風間菌と名付けられた目に見えない気体の擦り付け合い。
それはクラスだけに留まらず、同学年の全クラスに知れ渡っていた。

この時に私は

(この学校に…もう…味方はいないんだ…)

そう思った。

廊下を歩くだけで笑われて、水筒等は

「あ、ごめーん。引っかかって落としちゃった〜(笑)」

と、物も壊された。

そんな事が続き、やっといじめられていることに気づいた。
悪夢だと思いたかった。
小4になっても続くいじめも相変わらずで。
あだ名はだんだん増えていき、ブス、キモ風間、ア〇ターなど…。

…でも…私の悪夢はこんなものでは済まなかった…。

1番辛くて、苦しかった時期。
それは小5の時。多分、今までで1番酷くいじめられていたと思う。
もうこの時は私と言う存在を認めてくれるのは家族だけだった。
クラス替えの時に浴びせられる罵倒は想像がつくと思う。

「うわ、風間と一緒だ。さいってー。」

他の子達もコソコソと話していた。罵倒が飛んでくる中、ある会話が聞こえた。
私は耳を疑った。

「てかてか!知ってる?風間ってさ、鞘巳のこと好きなんだってさ!これ使えるっしょ。同じクラスだしさ。鞘巳本人も知ってたぜ。」

(どこからの情報?それ…。私…誰にも言ってな………あ…和佳ちゃんには言ったか…そっか…裏切られたんだ…)

私は、このクラスの大半が何かを企んでる。そう直感で感じた。
私はこの時の自分を被害者としか見てなかった。だから、私には味方はいないんだ。1人なんだ、と思い込んでいた。

…唯一の少しの救いである母に私は言ってみた。いじめられていることは隠して、ただ学校に行きたくないと。

(お母さんなら…分かってくれるかな…)

その思いは打ち砕かれ、母が言った言葉は

「嫌でもしんどくても行きなさい。1回行って、それでもしんどいなら帰っておいで。とりあえずは行ってきなさい。」

母は分かってくれなかった。
この時の唯一の救いも砕け散ったと思った。