「実はね、三枝さんに買い物に付き合ってもらった時に、病院の関係者に見られたんだよ…


それから、ありもしない噂が飛び交ってね…」



俺がそう言っても、あんまり信じてなさそうだな…



本当はもっといい所で渡そうと思っていたけど、仕方ない…


このまま喧嘩しているよりは良い。



「実はその時、これを買いに行ってたんだ…

何がいいのか分からなくて、決められなかったから、三枝さんに一緒に来てもらったんだけど…


それをみんなが勘違いしたみたいだね…」




俺はそう言って、紙袋から小さい箱を取り出して、パカッと開けた。



綺麗に輝いている"もの"を取り出して、握りしめる。



ふぅ…



「ななちゃん、左手出して?」




俺がそう言うと、ななちゃんは不思議そうな顔をしながらも、手を出してきた。




「…



ななちゃん、本当はもう少しちゃんとしたところで言おうと思ったんだけど…




俺と結婚してください!」



そう言って、ななちゃんの左手の薬指に握りしめていた、"もの"をはめた。



「…えっ?」



ななちゃんは、状況が読み込めないみたいで、自分の手に光る指輪に目が釘付けだ。



ちなみに、さっき袋から出して、握りしめていた"もの"は指輪だった。



三枝さんにも、これはななちゃんに似合いそうだと一緒に見てもらった指輪だ。


俺一人だったら、きっとまだ決められていなかった…




「あと、これも…


これはもっと早く渡したかったんだけど、遅くなっちゃってゴメンね…」



実は、紙袋にはもうひとつ入っている。