「──待てよ」



隣で、聞こえた声。

突然掴まれた腕。


あたしはゆっくりと、顔を上げた。




「……待ってて」



「──……え?」



そのままギュッと、掴まれた腕に力が込められる。

……どういう、意味?



その時、掴まれていた腕がすっと離された。

まだ少しだけ熱が残る右腕を、もう片方の腕で強く握る。





「――結婚式、日曜日だから」



あたしの目を見つめる東條。
その目を反らすことも出来ないまま、あたしもじっと東條の目を見つめる。




「……絶対来て。待ってるから」



視線がずれて、東條はあたしに背中を向けると、そのままあたしを置いて歩いて行ってしまった。


──やっぱり、わかんないよ。





「……行くわけ、ないじゃん……バカっ」