視線を、向ける。
その先にいたのは──東條。


……学校、来たんだ。

一瞬ほっとしたけれど、次の瞬間、あたしの期待は打ち砕かれた。





「──おはよう、香乃華」



東條は優しい笑顔を浮かべて──香乃華さんの肩を、そっと引き寄せた。

あたしの方なんて、見向きもしないまま。




「おはようございます、泰臣さん」



それに応えるように、香乃華さんもさっき以上の笑顔を浮かべて東條のことを見上げている。

……何なの、これ。


だって東條は、結婚を断ったんじゃないの?
東條は、香乃華さんと結婚するつもりなんてなかったんじゃないの?


それなのに。




「あ、そう言えば香乃華。
後でチャペルに来るようにって、母さんが言ってたけど」