「……俺、ちょっと母さんのとこ行って来るよ」



あたしから手を離し、東條はそのまま部屋を出て行ってしまった。


美椰さんも、おどおどとした表情を浮かべて『失礼します』と言うと部屋を出て行った。



残されたあたしは一人、ドアの前に立ち尽くしたまま。



「……どうして?」



諦めたくない。

諦めきれない。


なのに、こんな状態になったら。
あたしはもう、何も出来ない。


どうすることも、出来ないんだ。





「──やだよ……っ」




嫌だ。嫌だ。こんなの、嫌だよ。

こんなの──……



どうして、こうなったのかな。

どうして、こうなっちゃったの。




「……っ、泰臣──……」




どうしても、あたしは東條を諦めることは出来ないんだ。それくらい、ほんとに好きになってしまったから。