──確かに、そうかもしれない。

東條の家のこと、あたしは何も知らない。


東條のこと好きになったのも、香乃華さんよりは全然後だし。



それでも──……





「それでもあたし、やっぱり東條のこと諦めきれないんです。
香乃華さんと同じように、あたしも東條のこと好きなんです‼

そんなにも、“東條”の家にこだわるのなら……」



大きく息を吸い込み、視線を上げる。

もう一度視線を合わせて、あたしは口を開いた。





「あたしは別に、“東條”の名前なんて必要ありません。
あたしはただ、東條──泰臣のことが、必要なんです。

だから──……


だから、お願いします。東條をあたしに下さい」




目を反らすことなく、あたしはそう言い放った。

驚いたような表情を張り付けた、東條のお母さん。