……ダメなのに。


窓から外を見下ろすと、ちょうど東條と香乃華さんが玄関から出て車に乗り込む姿が見えた。



──勧めたのは、あたし。

──選んだのは、あたし。



だから……


パシャン、と水が跳ねる。

何かを洗い流すように、水で顔を洗う。


何度か水をかけたところで、顔を上げた。





「……よし」



タオルで顔についた水を拭ってクローゼットに手を伸ばすと、適当に引っ張り出した私服に急いで着替えた。

もう一度、鏡で確認する。


さっきまでの目の下の赤さが、少しだけ引いている。




そのままあたしは、部屋を飛び出した。


多分、玄関の方にはまだ東條と香乃華さんがいる。
今顔を合わせたら、あたしはきっとまた涙を流してしまう。