なに?

ぱっと顔を上げても、東條の顔は見れなくて。


そのまま手の平を強く握って、あたしは一人ダイニングルームから出た。

急いで、手の平に握った紙を開く。



“おはよう”



「……っ」



一言。
たった、これだけの言葉。

それなのに──……



こんなにも涙が出そうになるのは、どうしてなんだろう。


“おはよう”なんて、普段聞きなれてるようなどうでもいい言葉なのに。




「……東、條っ」




こんなにも好きなんだと、改めて思い知る自分がいる。
こんなにも好きなんだと、簡単に気付かされる。



ねぇ、大丈夫だよね?

あたし、信じていいんだよね?



東條からもらった小さな紙を握りしめ、涙を拭ってあたしはもう一度部屋の中に入った。