そっか、だから……



「だから、優等生のフリしてた。
みんなに優しくして、好かれようとしてた」



「でも、まだ続けた方が……」



「──だけどほんとは、本当の自分を見て欲しかった。本当の自分を、わかって欲しかったんだ」




あたしは一般庶民だけど、東條の親が考えることは何となくわかる。

それでも、わかったようなことを言うのは嫌だった。


あたしは何も言わないで、ただ繋いだままの手を強く握り返した。





「上手く、言えないけど……
あたしは、本当の東條のことが、……好きだからね」




それしか、言えなかったけど。

それでも、東條は笑ってくれた。





「……サンキュ」



だから今は、これでいいかなって。
東條が、あたしの隣にいてくれるなら。