あたしは、すっかり忘れていた。




「…………」




東條が、あたし以外の女の子からも人気があるってこと。
東條の笑顔は、あたしだけのモノではないってこと。






***


一般公開が始まり、あたしは『お化け屋敷』と書かれたチラシを手に持ったまま、大きなため息をついた。


チラ、と視線を向こうに向けてもう一度大きなため息をつく。



視線の先にあるのは──……
たくさんの女の子に囲まれた、東條の姿。


そんな光景を見て、思わずムッとしてしまう自分がいる。



もう一度チラ、と視線を向けると、なんだか東條は楽しそうに笑顔で話をしているように見える。


……知らない女の子に、わざわざ笑顔振り撒くつもりないって、言ってたのに。



そう思って、視線をわざと東條のいる方から背けた。