──お母さん、は?


聞いたこと、ない。
……なんでだろう?




「っ蘭‼大丈夫?ボーッとしてるけど」



「……え?あ……うん。大丈夫」



考えてみれば……なんで、なのかな。

……なんか気になる。



そんなあたしを余所に、縁は笑顔で話を続けた。




「そしたら、しっかりアピールしなきゃ‼

あたしは、東條くんの彼女ですって。
どうせもう、同棲までしちゃってるんだし?」



……んなバカな。

しかも同棲とかじゃなくて、あたしただのメイドだよ、メイド。




「……なに、その無駄なアピール」



「ちょっ‼なに無駄って‼
結婚したら、嫁姑関係は難しいよ!?」



「…………」




……まあいいや。
今はとりあえず、こんな話無視しとこ。


だって、家ですら会わないし。

忙しくて来れないんだよ、……多分。