【めい side】

季節が冬になって間もない頃。
私は学校の生徒会室で書類をまとめて、帰る用意をしていた。
私は私立春岡高校の生徒会長になって2年も経つ。
学校の先生や生徒達に頼りにされ、信頼されていた。
だが、それとは反対に予想もつかないほどの顔を持っていた。
それは、街で有名なヤンキー団、『乱』の団長という事。
学校の皆はもちろん、団のメンバーと家族以外は知らない。
私の父も乱の団長だったが、引退し、私が受け継いだ。
最初は嫌だったが、受け継ぐ人がいなかったため、仕方なく受け入れた。
「めい、帰るよっ」
生徒会室に顔を覗かせた私の親友日鳥ひなが迎えに来た。
ひなは私の親友で、団のメンバーでもある。
「うん!」
私は急いで、ひなの元へ向かった。
「今日の集会、20時でいいんだっけ?」
「うん、いつものとこでね」
ヤンキー団『乱』は月に1度、集会を開いていた。
どこの団に目をつけた方がいいとか、これからどんな事をするかとかを話し合う為に。




しばらく歩いてひなと別れた後、私は細い路地で声を掛けられた。
「お前、春岡校の生徒会長、裏音めいか?」
いきなり声を掛けられ、おまけに初対面に対して態度の悪すぎる口調に不快になりながら答えた。
「はい、そうですが。あなたは?」
普通、相手から名乗るのが礼儀でしょ!
そう思いながら尋ねた。
「俺は、影月 優」
良く見ると、黒髪に白い肌。凄く整った顔をしている。
自分とはあまり歳は変わらないようにも見える。
そして、優と名乗った生徒はそれだけを言って口を閉じた。
「それで、私に何の用ですか?」
用がないのなら、話し掛けて来ないはず。
なかなか目を合わせてこない優に用件を聞いた。
「お前、本当の顔見せろよ」
いきなり優が言った発言に体がビクッと跳ね上がった。
「本当の顔ってどうゆう意味ですか?」
そして鋭い目つきでやっと目を合わせてきた優が言った。
「とぼけるな。俺は、全部知ってる。お前が『乱』の団長だって事も」
まさか、この人知ってる?!
「私には何の事かよく分かりません!」
バレるわけにもいかず、私は否定した。
すると優は私を壁に押し付けて
「本当の事言えよ」
急なこの体勢に驚いた。
こ、これってどうゆう状況?!
「あの、どいてください!」
「嫌だ、認めるまで離さない」
この人、どうかしてる!
こういう時ってどうすればいいの?!
ブーッ、ブーッ、ブーッ・・・・・───。
すると優のケータイが鳴り響いた。
「ッち」
舌打ちしながら手を離し、ケータイを開く。
そして、私の方を向き、「またそのうち会うことになる」と言い残して、去っていった。
1人ぽつんと、その場に残された私は「絶対に会うもんか!」と文句を言いながら急いで帰っていった。