パンパンパン!

連続で誰かを打つ拳銃の音がして

藤堂だな。

そう分かった。

藤堂は音が違う。

同じ拳銃を使っていても、音だけで綺麗だと思える。

......だれを?

そう思ったのが遅かった。

あの3発で気づいていれば、璃花があんな姿にならずにすんだ。

ドロップは消す時はいつも地下室だった。

だから銃声がすぐ外の廊下から聞こえるなんてありえないはずだったんだ。

思い出すのが、遅すぎた。


藤堂は感情的になって人間を撃ったりしない

だからこんな場所で人なんか撃たない。


璃花の目の前で人を殺すことはあっても

それは任務の時とかの殺し方で。


璃花は今日 offだった。

任務と関係がないのに、藤堂が璃花の見える

前で銃を使うなんて...。


.........ん?

藤堂は感情的になることは無い。

でも、例外はある。

嫌な予感がした。

藤堂は任務と関係なしに璃花の前で人を撃た

ない。

だけど。

いや、それは無いはずだ。

藤堂が、璃花を、撃つ、なんて...。

パンッパンッ!

また銃声。

外が騒がしくなった。

「飛鳥さんを!早く!」


「動くんじゃねぇッ!!」

...藤堂?

周りの人間がびくっとしたのが目に見えるようだった。

誰だ。誰だ。

確信に変わった、答えの出た疑問から目を逸らしたかった。

椅子を蹴倒して立ち上がってドアを開けた。


血の、匂いがする。

煙の出た銃口。

震えた片手で銃を握っている藤堂。

その先に...

「璃花っ」

今にも倒れそうな全身から血を流して
それでも真っ直ぐ藤堂を見て立っている璃花がいた。

「俺に拾われた時からお前はドロップなんだ

よ!良心なんかっ捨てろ!」

パン!

神がかったほど百発百中の人間から放たれた銃弾は、真っ直ぐ小さな少女に向かっていった。

間に合わなかった。

俺が駆けていっても、璃花の所に辿り着く頃には

璃花は前のめりに倒れる寸前で。

抱きとめて泣きそうな、でも涙を流さない

璃花を見た。

「ハァッハァッ...」

「苦しいな、こんな撃たれて。」

璃花の髪を払って血がある場所に触れた。

「い、たい」

「......痛いよな。俺がすぐ治してやるから。」

涙を浮かべて無理やり目を開けている璃花
に胸が苦しくなって。

背後からの足音に気づかなかった。

「そいつ渡せ。」

低い声に恐怖と怒りが湧いた。

藤堂は璃花を大切に思っていた。

それだから余計に。

「お前、自分が何したか分かってんのか」

怒りで声が震えた。

「まだ足りねぇ。渡せ。」

「......ざけんなっ!!」

藤堂を睨みつけて、大声で怒鳴った。

「てめぇ1発でもな!人は死ぬんだよっ!

ましてそれが子供だったら音だけでショック

で死んじまうんだよ!まだ足りない?

ふざけんじゃねぇッ、こんなんなってる璃花

にそれ言うのかよ!」

周りの人間がザワつく。

ああ、邪魔だ。全部邪魔だ。

腕の中で気絶した璃花の息は段々浅くなっていて。

璃花を抱き抱えて救護室に戻った。


ガンッ!!!


何かが凄い力で殴られた音がした。

後にそこが修復不可能なほど歪んだ頑丈な鉄で、

藤堂がそれを打ち破る寸前の力を出すほど

藤堂自身が藤堂を責め続けていた事を周囲に知らせることになる。