「おはよう、飛鳥兄ちゃん」

にこっと笑った璃花。思わず抱き上げてしまう。

「璃花〜。おはよう!」

璃花がこっちに来た時に青々としていた
木の葉はもうすっかり散っていて、冬を感じさせる寒い風が辺りを吹き荒らしている。

「あ!藤堂っ」

璃花は俺からするりと逃げて頭上の壁をまるでうんていのようにつたってドアのそばに居る藤堂の所へ行った。

「おはよー!」

藤堂は驚いた様に壁を見てそれから璃花を見た。

「すごいでしょー!璃花、壁伝いが出来るん

だよ!」

得意気な璃花。藤堂は 、あ"?と言って璃花を見るけど璃花には通じない。

「すごいでしょっ。この間の任務も

こうやって外まで出てきたんだよー」

にこにこ顔の璃花。こっちまで笑顔になってしまう。

藤堂の表情が一瞬緩んだ。

でもすぐ元に戻る。

「うるせぇ、あれくらい俺にもできる。」

くるりと背を向ける藤堂。

璃花はしゅんとしたけれどすぐ顔を上げて

「は?!てめっ」

藤堂の背中の服をぐいっと引っ張った。

突然の奇襲に藤堂も驚いて振り返る。

「絶対、勝つ!」

璃花の目はキラキラしていて、その目は藤堂
を信じていた。

負けない、じゃなくて勝つ。

その言葉に藤堂もフッと笑顔になった。

「てめぇには出来ねぇよ。」

「出来るもん!」

藤堂の服を引っ張る璃花。
その手を離させた藤堂はスっと璃花を抱き上げて、

「バイバイ、飛鳥兄ちゃん!」

手を振る璃花。

俺も軽く手を振った。

「!?」

ドアが閉まる直前。

「...なにあれ、こわ。」

少しだけ振り返った藤堂が俺を冷たく睨んでいた。

あれは嫉妬だと気付いたのは、もう少し後のこと。