「......葉月のケチ」

なんか悪口言い出した。

「バカ」

「そうだね」

「低脳」

「そうかもね」

「なんで怒らないのっ」

「え?怒る必要なくない?」

少し驚いてそう言うと涙目の璃花と目が合った。

「どうしたの?どっか痛い...」

手を伸ばして璃花の涙を拭おうとしたら璃花が消えた。
その代わりに首に手が回されていて。

「...璃花?」

抱きついてきた璃花の背中に手を回して
少し力を込めると璃花の肩がびくっと動いた。
ワイシャツ越しの腕から体温が感じ取れて、
確実にさっきより熱が上がっている...。

「......ごめんなさい。」

涙声の璃花が少し咳き込んだ。
背中をさするとまた肩が揺れた。

「謝らなくていいよ、大丈夫。」

分かってるからと呟くと璃花の腕の力が増した。多分本当はこんなもんじゃないだろう。

会ってすぐの頃、2時間もブランコをしていたり、僕が背中を押したら後進してきて押し返されそうになったこともあったのだから。

『無理しやすいからダメだと思ったら

可愛くても許しちゃいけない。』

本家を出る前の飛鳥の真剣な顔とあの言葉がよみがえってきた。

『璃花の大丈夫は大丈夫じゃないから。』

確か、みどりにもそう言われた。

僕もそれは分かってる。嫌という程。