璃花達が10歳になった時。

「なぁ、みどり。」

「なに」

怒ってるわけでも冷たいわけでもない

どうでも良さそうな受け答え。

それが本来のみどり。


「お前、由香の事どー思う?」

「は?由香?璃花じゃなくて?」

俺が頷くとみどりは一言。

「姉ちゃんみたい。」

「......姉ちゃん??」

鮎美家に女なんていたのか。

軽く驚いた。


「こないだ俺ん家潰されたじゃん?」


「うん、え!?えええぇ!?」


あの、鮎美組が?

日本で3番目に実力派と言われる鮎美組が??

「え、だ、誰に?」

「璃花に。」

あくまであっさり答えられ

「へぇ、ああ璃花に。まぁ璃花なら...ん!?

へ!?ええええっ!」


「うるさい、黙って。」

溜め息を吐いてみどりは俺を一瞥した。


「結生殺されたのが、向こうに伝わったみた

いで、俺がここにいるのもバレてdrop

潰そうとしたんだろうけど返り討ち。だって

さ」

あんまりみどりがあっさり言うから...


「最初っから驚けなかったんだけど...」


「別に驚かなくていいし。うるせぇから」


それさ?どうでもよさそうにいわないで?

しかも本人の前で。


「...まさか、みどり璃花のこと殺そうと...」

「するわけねぇだろ。殺すぞ。」

「やめて脅さないで俺医者」

「医者っぽくない。」


...酷いわぁと呟く。

みどりは無視。


「別に潰されたっつっても組だけ。

親父もお袋も無事だし。今は二人で田舎で

畑仕事しようか海外旅行か迷ってるって」


......随分暢気だな。元組長。

そう思ったのが顔に出てたのかみどりはまた
溜め息を吐いた。

「うちの家族、皆うるさいんだよ。

ハイテンションで、バーゲンセールがどう

の、卵1パックがどうのって」


しかも家庭的。

「皆、仕事のときは恐ろしいくせに

潰されたらまぁいっかーみてぇなとこあっ

て俺も実際そう思ったし。」


「......みどり、すごく現実的な大人になるよ」

「あ"?」

「いえ、ナンデモナイッス」

そ。と返事をしたみどりは窓の外を見つめ

た。

周りは海。

深い深い海。

夜だからか辺りは暗く、真っ黒な海が月に
照らされてる。


「で?姉ちゃんみたいって?」


みどりはそのうち分かるよとそっぽを向いた。

「dropにいるから、由香みたいな奴探せば

すぐ分かる。」

「えあ!?ドロップにいんの!?」


なぜ故に。

知らねーよとみどりは俺を睨んだ。


「飛鳥に惚れたとか言って勝手に入ってきや

がった。」

「......はい?」

そんな怖い目で睨まれても、俺、そんなの知

らないし。


大体、由香みたいな奴って由香以外会ったことないし。


「まぁ、姉ちゃんは銃の専門家だから

ここにいても潰されねぇだろうけど。」


その言葉を聞いてポーカーフェイスのみどり

の心情がやっと分かった。

「心配なんだ」

「殺されたいの?さっきから」

「滅相もないです。」



「...なぁみどり。」

「なに。言いたいことあるならさっさと言っ

て。俺、この後任務だから。」


流石だな。あの時から人を分析するのが

上手い。

なんて関心して。


みどりはいざ話すと真っ直ぐ俺を見て話を聞いてくれた。

1度も顔を背けず、口も挟まず。


「liveなんだよ。俺。」


裏切り者の俺を責めなかった。


「みどりは不本意かもしれないけど

俺はお前達みたいな純粋な奴らが汚れて

くのをみたくない。いつかここを壊して欲し

い」

「...」

「あの二人を治したい。璃花と藤堂を。」

藤堂、と言った時みどりの片眉がピクっと動いた。

「璃花と由香とみどりの3人でここを引っ張っ

て行くんじゃなくて。ここを壊してほしい」


言い切った。

みどりは俯いた。