アスレチックの上から見る空はすごく綺麗で、その時間だけは何も考えずに済んだ。何も考えなくて良かった。
けど、その日は違った。
“トントン”
後から肩を叩かれた。私はまさか家族が私を見つけて怒りに来たのかと思った。そう考えると体がこわばり震えてきた。そんな私の様子に気がついたのか後ろから声が聞こえた。
「ねぇ、大丈夫?ここで何してるの?」
とても優しい声だった。私は恐る恐る振り返って見た。
そこには、同い年ぐらいであろう男の子が立っていた。
その男の子は私の顔を見ると話し掛けてきた。
「俺の名前は渡辺奏。君は?」
声の通りその奏と言う人は優しそうな顔に優しい声をしていた。私は当時男の人が凄く怖くて彼も凄く怖くてどんどん後ろに下がっていっていた。後ろはアスレチックの丁度降りれる部分があり吹き抜けになっていて私はそこへどんどん進んで行っていた。遂にその部分まで来てしまい私は手が滑りその時〝自分これで死ぬんだな〟って思った。でも違った。その男の子は私の腰に手を回し上に引っ張りあげてくれた。呆然としてる私を彼はぎゅっと無言で抱き締めた。私は人の初めての温かさに涙が止まらなかった。私は泣きじゃくった。何も考えずにひたすら泣いた。