捕らえられた者達を一旦城下の拘留所に預かってもらうなど事後処理に追われバタバタと忙しく動き回っている間に祭典の剣術試合も終焉の時を迎えていた。
 騒ぎに巻き込まれ、結局、祭典の見学など殆ど出来なかったに等しい。
 ま、クスイの罪人が起こした事件ということで、まったく無関係でないことが一種の慰めになるかどうかは謎だけど…というか余計に腹立たしくなる要因か。
「お手を煩わしてしまい、申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ遊学中にも拘らず仕事をさせてしまいましたね」
「無理やり追い出されたようなものですから」
 毒つくクーデノムの言葉にハイニは声を上げて笑ってみせる。
「王にも考えがあるのですよ」
「人の留守中に何を企んでいるのかは知りませんけどね」
 王宮の一角から宿へ戻ろうと出てきたクーデノムを待ち受けていたのは一台の馬車。
 戸口が開き現れたのは金髪の人物…テニトラニス王のコセラーナだった。
「宿屋まで送って行くよ」
 笑顔で言われ、またしても断る理由がない。それに少し話をしてみたかったのも事実。
「ありがとうございます」
 クーデノムが乗り込むと馬車はゆっくりと動き出した。
 乗っているのはコセラーナ一人だけだった。