他の者の邪魔にならないようにと壁にもたれ、ぼーっと会場を見渡していた。
 壁には絵画がいくつも並べられ、天井には大きなシャンデリアが吊り下がっている。
 ここぞとばかり着飾った貴婦人たちが溢れていて、各々談笑に華を咲かせている。
 時折、側を通ると漂ってくるきつい香水の匂いに呼吸を我慢しながら、ウェイターが運んでいたグラスを受け取り口にする。
 ルクウート国主催ということあって、女性向けでもあるのかアルコール度低めの少し甘めだがいい果実酒を振舞っている。
 まだマキセもシキアも戻ってくる気配はなく、見当たらない。
 知り合いもいない場所にひとり残されて、どうしようかと先程から視線ばかり動かしていた。
 たいした用もないのに人に話しかけるのは苦手だった。
 社交が苦手とはこういう意味だ。
 仕事とかなら、伝えるべき事があるので平気なのだが。
「あれは?」
 色とりどりのドレスの人々に埋もれるようにして綺麗な金色の髪が見えた。
 窓際のソファに腰かけたひとりの少女。
 周囲に比べたらやや地味な服装は、たぶん足の捻挫を目立たなくするためにはいているブーツに合わせてのことだろう。
 きらびやかなドレスでは高いヒールでないと合わないから。
 それでもクーデノムにとっては好ましい印象として彼女が捕らえられた。