【第23話】


大変です。私、鈴 奏。さっきまで、そら君達が遊びに来ていまして。
一ノ瀬くんをそら君って呼べるようになったり、そら君が私の作った曲の大ファンだと知ったり・・・とーーってもハッピーな時間を過ごしていたのですが・・・

「うーうー!!!!パパの かなちゃんが不良になっちゃったよぉ~」
この、私の目の前で号泣しているのは私の父親。鈴 光太郎(コウタロウ)。この人もママと同じく音楽家 兼 事務所の偉い人です。
実は・・・この父親はかなりの親バカで・・・。
私が6時前までに帰って来なかったりすると、こうやって号泣する。
今日までは長い出張にいってたんだけど、久しぶりに帰ってきたのだ。

今回は6時前に帰ってこなかったからじゃなくて、パパの帰ってくるときに私の家から出ていく男の子2人を見かけたらしいからなのだ。その男の子2人とは・・・そら君とこうき君。

「なんで男が2人も かなちゃんと一緒にいたのかな~?しくしく」
「も~パパ、いいじゃない!
かなも年頃の女の子よ?」
ママがなだめるが、パパの号泣は止まらない。

「あのね、パパ。あの2人は・・・」
「誰だって関係ない!男が家にいるなんてダメだ!もう、入れちゃダメだ!」
パパはまだ大号泣。はぁ。疲れる。

「ねぇ。パパ?」
私はパパの顔をのぞきこんだ。
パパはふっと私の顔を見る。

「私ね、将来の夢ができたの」
私は、前に決めた将来の夢を話そうと思った。ここは話変えた方がいいよね。

「そ、そうなのか!?パパは なんでも応援するぞ!?」
パパはパァァっと顔を明るくした。

私は ふーっと一息ついた。

「私、私ね?ママにも言ってなかったんだけど、」
パパがうんっうんっと嬉しそうに頷く。

「私、シンガーソングライターになりたいの!」
私はパパとママに打ち明けた。

「あらー!いいじゃない!ママ、応援・・・」
「ダメだ!!!!」
ママが喜んでくれた所に、パパが反対した。

「な、なんで!?なんで ダメなの?パパ!」
私は立ち上がってパパに問い詰めた。

「ダメなものはダメだ!」
パパが聞いたことのないような大声で言った。ママも隣でびっくりしている。

「な、なんで!?なんで、作詞・作曲家は良くてシンガーソングライターはダメなの!?」
そうだよ!なんで?私は顔を出さないまま、事務所の裏の人間として生きていくっていうの!?

「理由はない。ダメだ」
パパはうつむいて言った。

私は 今まで感じたことのないような苛立ちを感じた。
「もういい・・・」
私は言った。怒りで声が震える。

「かなちゃん?どうしたの?」
ママが私の顔をのぞきこんだ。

「もう、もういや!!!!こんな家!!!!!」
絶叫した。ママにもパパにも言ったことのないトーンで。

「もう嫌なの、こんな家!!!!
パパ、なんで?なんで作詞・作曲家は良いの!?私は・・・表に出たい!歌いたいの!!!!作るだけじゃ嫌!パパみたいに、裏で働きたくはないの!
それと・・・男子の事だけど!!!!私が友達と交流しちゃダメだって言うの?やっと・・・高校入ってやっと男友達ができたのに・・・。
あと・・・あと、パパ!パパも嫌い!」

パパがその言葉を聞いてびっくりした。
顔を バッと上げる。

「パパ?なんで出張から帰ってきて、久しぶりの再開なのに!
ただいまも言わないで、そしてなに!?
男と一緒にいたらダメだ、
お前の夢も許さない!?」
パパがはっとしたような顔になる。

「もうイヤ!私、作詞・作詞家もパパの娘も辞める!」
パパがついに ショックを受けたみたいで、言葉を失っていた。