【第16話】


ピーンポーン

私は、つむぎとこうきくんと一緒に一ノ瀬くんの お見舞いに来ました。

とあるマンションなんだけど・・・。
毎日 一ノ瀬くんが立っている玄関前だと
思うと、なぜか緊張する。

私・・・変態かな・・・?

ガチャっと玄関の扉が開いた。
「はい・・・
お、こうき達じゃん!つむぎと鈴まで!」

一ノ瀬くんは、思ったより元気そうだった。でも・・・最初、悲しそうな顔していたのは気のせい・・・?

「おい~優等生が 何サボってんだよ!
ほれ、プリント!」
こうきくんは一ノ瀬くんの肩をポンと叩いて、プリントを渡した。

「へいへい。センキュ。
あ、ちょっと上がってったら?」
一ノ瀬くんが玄関の奥に案内しようとした。
私と つむぎは誘われてるのかな?
こうきくんは、慣れているようにササっと玄関の奥に入っていく。

つむぎも 実際は礼儀正しい子だから、入っていいのか迷っているらしい。

「おーい。お前らも入れよ!」
一ノ瀬くんが玄関の奥から声をかけてくれた。
つむぎが その言葉を聞いて「おじゃましマース」と言って入っていった。

私も つむぎの後を追う。

・・・一ノ瀬くんのお家は なんとなくムーディな感じで大人っぽかった。
植物も多くて、キッチンもしっかり調味料と食器が分けられていた。とても綺麗に整頓されている。

「ってあー!お前、なんも食べてないんじゃねーの!?」
こうきくんが冷蔵庫の中を見て大声を出し
た。
私達も その声にびっくりして こうきくんの方を見る。

「あー買いに行こうと思ったんだけどさ・・・せんせーに見つかったらサボりだと思われるだろ?」
一ノ瀬くんが こうきくんにリビングから声をかけた。
たしかに。・・・部屋は綺麗だけど、冷蔵庫のなかには食材がほとんどない。

「しっかたねぇーなぁ~
俺が買ってきてやるよ。おい、つむぎ 一緒に行くぞ。」
こうきくんは今まで 大人しかったつむぎに声をかけた。

「う、うん。」
つむぎも 玄関に向かう こうきくんの後を追う。

バタン

・・・一ノ瀬くんと二人っきりになった。
なんか・・・緊張で気まずい・・・。

「鈴・・・こうきと 付き合うことになったのか?」
気まずい空気を破ってくれた一ノ瀬くん。
なんで?なんでそんな悲しそうな顔して下を向いてるの?

「う、ううん。」
私は否定した。っていうか少し嬉しかった。私が、こうきくんと 付き合ったら一ノ瀬くんは悲しい顔をするのかな?
・・・だったらいいのに。
なんども そう思う。

「あ、そーなのか。そーなんだ!」
一ノ瀬くんは 急にテンションが上がった。
顔を上げて なぜか嬉しそうだ。

・・・あ、まって。一ノ瀬くんは『私をこうきくんに取られたくないから悲しい顔してた』っていう私の勝手な想像だったけど・・・。ほんとは違くて、『こうきくんが私に取られそう』だったから悲しい顔してたっていう事も あったりするよね?

???