「エドガーさんって、どう思う?」

同じ美術サークルに所属している親友の野々宮が、大学の昼休みの食堂で声をかけてきたので、斎藤春美(サイトウハルミ)は首をかしげた。
春美は普段、テレビを見るならNHKと決めているので、芸能情報には無知なのだ。

「俳優?芸人?」
「いや、はるちゃん。知らないの。エドガーさん。あ、そっか。暫くズル寝坊自主休講だったもんね」 

春美は野々宮を小突くと、続きを促した。

「エドガーさんだよ。新しくサークルに入ってきたじゃん。LINE見てない?」

彼女に言われて、春美があっと声を漏らす。
「あのアイコンがスーパーマンのひと?へー、エドガーさんって言うの」

そういえば、美術サークルLINEに誰かが追加されていたような気がする。気がするってだけで、そうでない気もしていた。

「私もあったことないから気になってたんだけどな。エドガーさん、会いたいよお」
野々宮はその丸々とした瞳をきらきらさせて、春美を見た。
「外国人!イケメン!国際結婚!うおー!」
したい!
子供をハーフにして、モデルになってほしい!

と野々宮は外見に似合わない雄叫びをあげる。春美はその様子を一瞥すると、目の前の昼食に目を向けた。箸を持って口の中へかきこむ。

人の愛のカタチは自由なのだ。

昼食を食べ終わった春美はくどくどと自身の理想の婚活プランについて語る野々宮を置いて立ち上がる。焦る野々宮を尻目に食器を片付けると、春美は食堂を出てとある場所へ向かった。