「ねえ、優姫さん」
明菜が飛んでいる蝶を追いかける様子を眺めながら、お母さんが話を切り出した。
「もしあなたが他の愛する人が出来て、その人と共に生きて行きたいと思ったなら……
全然そうしてもらっても構わないのよ?
あなたの人生はまだ長いわ。
あなたほど素敵な女性だったら、この先あの子よりもいい人と巡り逢えると思うの。
責任を感じて誰も愛さないのはいけないことだわ。
逆にそれは誰も望んでいない。
私も明菜を授かった時に夫が死んでしまったから、あなたの気持ちが痛い程分かるの。
それでも、私は夫と一緒に過ごした時間が何十年とあった。
けれど、あなた達は夫婦としてはたった一年しかいられなかった。
……もし、あなたを何かが苦しめているなら、あの子の事、忘れてしまってもいいのよ?」
お母さんが優姫の手をとり、強く握る。
風が静かに二人を通り過ぎて行く。
明菜の笑い声だけが聴覚を満たす。
優姫は少し考えて、静かに口を開く。


