すると、


「姫花、また逃げるのかよ。もう逃げられないぞ、降参して俺のとこに来い」


勝ち誇り、一歩一歩近づく気配が憎らしい。


彼の思い通りになったら、私はもう彼から離れられない気がする。


「いやよ」


「運命を感じたのは、俺だけなのか?」


「私のことなんて何も知らないくせに、運命なんて言わないで」


「これからお互いを知っていけばいいんじゃないのか?惹かれあったのは、あのキスが証明してるだろう」


「あれは、あなたが無理矢理」


「拒まなかったくせに、キスの先が怖くなって逃げ出したんだろう?」


蕩けるキスを感じて、それ以上受け入れたら彼を忘れられないと直感的に感じたからだ。


「優里亜の身代わりで…あの場にいたからよ」


「草履を落としてまで、逃げた理由がそれか!俺を嫌いで逃げたんじゃないんだな」


嫌いと言えたらいいのに、この傲慢な男に一瞬で恋に落ち、今こうして再会すると胸がときめいている。


「俺のシンデレラ…」


背後から、彼に抱きしめられ逃げ場を無くした。


「その呼び方はやめて」


「姫花、あの日の夜を忘れたなんて言わせないぞ。素直になってしまえ」


「…尊を好きになっていいの?」


「不安になんてさせない」