「見つけられないように、頑張るわ」


彼が私を探しているなんて、ただの気まぐれに違いない。


隠れていればそのうち諦めるだろう。


そう思っていた。





「須藤さん、ちょっといい?」


「はい、なんでしょう?」


「うちの会社に須藤 姫花って女性はいるかって問い合わせがあったらしいのよ。何か心当たりある?」


そう言われたのは、優里亜の電話から翌日の事だった。


派遣された会社で清楚員のアルバイトをチーム同士でしている。そのチーム長からの質問に、答えが詰まる。


まさか⁈


「ないです」


「そう、それなら警戒しないといけないわね。今、いろいろと物騒な世の中だから、気をつけてね。もちろん、会社の方は何も話してないから安心してね」


「はい、ありがとうございます」


それから数日経ったある日、いつものように派遣されたショッピングモールの従業員用の休憩所で、まったりとお茶を飲んでいた時だった。


「うちの会社、麻生本社と契約したらしいのよ」


「な、なんですか?その話詳しく教えてください」


「須藤さんも麻生本社の清掃員したいのかしら?」


したくありません。
だから、詳しく教えてほしい。