昔から、そうだった。
曲がった事が嫌いで、はっきりさせないと気が済まないところが、大人になっても変わるはずなかったのだ。
口止めしなかった私が悪い。
だけど、叫ばずにはいられない。
「もう、何言ってくれるの」
『名前ぐらい何よ。今度会った時に間違えて呼ばれるよりいいでしょう。それにアルバイト先を聞いたところで個人情報云々で何もできないわよ』
「そうだけど…」
『まぁ、本気で探している雰囲気だったわよ。彼の真剣な気持ちが本物か試してみたくないの?見つけ出されたら、素直に一目惚れを認めて付き合えばいいし、もし、姫花が嫌なら逃げ切ればいいだけよ』
他人事だと思って、簡単に言ってくれる。
探して欲しくないような…
探して欲しいような複雑な気持ちが揺れ動いていた。
「優里亜の口ぶりだと見つけられるのが前提の話に聞こえるけど⁈」
『うん、あの男なら姫花を必ず見つけ出すと思うもの』
そう思うなら、アルバイト先を教えたりしないでほしかった。
きっと、優里亜のお眼鏡に叶う人だから、教えたとわかっているけど、彼と私は住む世界が違い過ぎる。心に秘めているぐらいがちょうどいい。