翔喜side

俺は小学4年生で引っ越した。
俺は、もともといた学校に友達も沢山いて、男女問わず好かれていた。

だから、引越しなんて嫌だった。

お別れ会は、皆泣いていた。

皆、どうして、引っ越すの?
と言いながら泣いてくれた。
俺のために。
でも、泣くのは男じゃないって父さんに言われたから、父さんから教わったから俺は絶対に泣かなかった。
でも、
凄く寂しくて、イライラした。
俺の意見も聞かずに両親は離婚。
そして、母方の方に付くことになった。
大好きだった父さんとも

お別れ。

父さんは最後、優しい笑顔で俺に

「ずっと元気でいろよな、健康だけはしっかり整えて。愛する人を見つけてその人を守って、幸せになりなさい。父さんはいつでも翔喜の味方だからな。じゃあな。幸せな時をありがとう。わすれない。」

と、言ってくれた。

でも、どこか父さんの目は悲しそうで今にも涙があふれそうだったということは
覚えている。


その後、
五時間近く車を飛ばして、
住む家に着いた。
母さんのやりたい仕事が近くにあったからその仕事場の近くの家に引っ越した。

「よし!じゃー!家具は全て出せたからご近所さんに挨拶に行こっか!」
「......」
「...んー、あ、あのね、!ご近所さんに翔喜と同い年くらいの女の子がいるみたいよ!良かったわね!初めは、その子と友達になれればいいわね。」
「......別に。友達なんていらねーよ。」
「まあ、そう言わず行くわよ!(苦笑)」

俺は、イライラしてた。
凄くイライラしてた。
大好きな父さん。
大切な友達も失ってしまったから。
母さんが俺を引っ張って外へ連れ出す。
友達なんていらないよ。
母さん。

ピーンポーン

「あ、近所に引っ越してきた上野と申しますが...。少しご挨拶をと思いまして。今お時間いただけますか?」
「あ!はじめまして!いま、外に行きます!」

「......」
俺はどんな奴が来ようと、
何が何でも、話さない。
そう決めた。
もう友達なんてめんどくさかった。

ガチャ

家のドアが開いた。

「お待たせしました〜。近所に住んでいる
松下と申します。宜しくお願いします。」

「はじめまして。わざわざお時間ありがとうございます。ほら、翔喜。」

「......」

「すいません。この子普段は明るい子なんですが今機嫌が悪いようで(汗)」

「全然大丈夫ですよ!ほら、梨絵貴方から自己紹介しなさい。」

「え、えっと......松下梨絵です!!
え、っと...。小学生4年生です。宜しくね!」

こいつが、同級生の子か。

なんか、すぐ泣きそう。

でも、そのとき、梨絵の明るさに救われた。

凄く緊張していたようでカタコトだったけど凄く優しい顔で、ニコニコしながら自己紹介をしてくれた。

「お、おう。俺の、な、名前は翔喜だ。宜しくな。」

「うん!翔喜くん宜しくね!友達になろ!!!!!」

「う、うん。しょ、翔喜でいいよ。翔喜君だなんて聞いてる方が苦しい。」

梨絵の明るさ。から、
俺は機嫌を取り戻して
学校に通った。
梨絵と、2人で登下校していた。
そしていつの間にか
中学生になった。

「はぁ〜〜。失恋しちゃったよ〜!翔喜〜!!」

「はあ?知らねーよ。お前みたいな女を好く男の方がすくねーわ」

「ちょっ、何よその言い方!少しは慰めてくれてもいいじゃない!」

最近こんな会話が多いい。
梨絵が、失恋しただの。
恋に落ちただの。
梨絵は、恋愛にばっか目をつけていた。
俺はそんな梨絵を見てイライラしていた。
実は、俺は梨絵に片思いしていた。
一目惚れだった。
ずっとずっと好きだった。
初対面の時から。
今まで。
片思いと気づいたのは初対面の少し日が経った時だった。

梨絵以外を恋愛対象として、見た事なんて無かった。見れなかった。

なんやかんだで、俺は梨絵に一度も思いを伝えないまま、高校に上がった。
俺は、梨絵より全然上の高校に行けた。
だけど、梨絵に合わせて
同じ学校にした。
梨絵に、合わせて高校を選んだなんて。
まだ伝えてないけど。

高校に上がって。
梨絵は早速好きな人が出来た。
一目惚れみたいだ。
俺と同じだ。
でも、その相手は校内一のイケメンの
【高下月希】だった。
梨絵は、好きな人にすぐ思いを伝えることができる方なのに。
高下には全く伝えられないでいた。

「あーあーあー、どうしよう...翔喜〜。高下先輩と話せないまんま高校生活終わってくのかな〜...」

「はー?また、月希のことかよ。普通に話しかけりゃいいじゃん。」

「ちょっ、月希だなんて!高下先輩でも馴れ馴れしいほうなのに!呼び捨てとか有り得ないわ〜!」

「別に、関わるような奴じゃねーし。」

「あっそ〜。」

俺と梨絵との会話はほとんどあの月希の話だ。
俺は耳にしていた。
月希はかわいい女には媚び売って。
女垂らしという、噂を。
だからこそ、なんで、あんな奴を好きになるんだと思いイライラしていた。
そして、時は流れて。
俺達は高校2年。
高下は3年になっていた。

「梨絵〜今日部活ないか?無かったら一緒に帰ろうぜ〜!」

俺は、梨絵の頭の中が高下の事だけにならないように
頻繁に登下校する度に梨絵を誘っていた。

「え、ぶ、部活ないけど...む、無理!」

梨絵に、断られた。

断られたのは梨絵が部活がある時だけだったのに。
何故か部活がないのに断られた。何でだ?
もやもやした。
「え〜なんで?けっちくせぇ〜!つーかなんでカタコト?何かあるのか?」

「い、いや、あんたには関係ないから!」

は?なんだよそれ。

「うん!だから、今日は無理無理!」

腹立つ。梨絵は今アホっ面で何かを妄想している。
どうせ高下の事だ。
高下なんてさっさと卒業すればいい。そう思っていた。

下校時間。
俺は1人で帰っていた。
「あ、やっべ。忘れ物した...。明日提出しなきゃいけねーのに。ノート...。戻るか...。」

俺は戻って、自分の教室のドアから教室を覗いた。
そしたら、梨絵が俺の机で何かを書いていた。
ドキドキ心臓がなった。
なぜかと言うと、前にネットで自分の教室で好きな人と同じ席順の人の机でラブレターを書くと付き合える。みたいな
おまじないを見たことがあったからだ。

「もしかして。俺に?」

恐る恐る、ドアを開けた。
俺は、偶然梨絵が教室にいたような演技をした。

「あー、最悪だ忘れ物しちまった〜......あれ?梨絵?」

「...え?」

梨絵が目を大きく開いて固まっていた。

「え、お、おまえ、俺の机で何してんの?」

「えっえっと、な、何でもないよ!」

絶対嘘だ。

梨絵の事だ。
おまじない何てすぐにネットで見つけたはずだ。

「じゃ、じゃあね!」

「は?ちょっ、おい!」

梨絵が全速力で教室から出ていった。
それと同時に、梨絵が何かを書いていた紙が床に落ちた。
梨絵の事を追いかけようとしたけれど。
その紙に目がいってしまった。

何を書いていたんだ?
きっと手紙だろう。
俺はちらりと誰宛の手紙なのかを確認した。

『高下先輩へ
私の事知らないかも知れませんがずっと月希先輩のこと見ていました。』

ここで、終わっていた。
硬直した。

「ハハ...だよな。あいつが俺の事を好きに...なる事...なんて。ねーよな。つーか、俺梨絵の気持ち知ってんのに期待するとか...ほんと...」

情けない...

父さんごめんなさい。
俺は男じゃないです。
俺、泣いてしまいました。

悔しい。
腹が立つ。

梨絵の気持ちなんて知ってるのに
改めて知らされると胸が張り裂けそうになった。

梨絵は、今まで何人かに手紙告白していた。
そのたびに、渡す前に手紙を、見してもらっていた。
だから。
すぐに分かった。
梨絵が高下に送る手紙は今までに以上に
気持ちがこもっているふうに見えた。
梨絵は高下のこと本気なんだ。

「夢くらい。見させてください。神様。」

俺は、足を進めて家へ帰った。手紙を持って。
手紙は、明日梨絵に返すことにする。
家に帰ると、梨絵の部屋は電気が付いていなかった。
いつも、部屋にいる時間なのに。

「寝たのかな。」

俺は、家に帰ってすぐにベットに倒れ込んだ。
梨絵の笑顔。
初めてあった時の明るさ。
声を思い出していたらいつの間にか寝てしまっていた。