失くしたラブレター

「梨絵〜今日部活あるか?無かったら一緒に帰ろうぜ〜!」


翔喜が私に一緒に下校しないか聞いてきた。

「え、ぶ、部活ないけど...今日は、む、無理!」

「え〜なんで〜?珍し〜。フッwつーか、何でそんなカタコト?今日何かあるのか?」

「い、いや、あんたには関係ないから!うん!だから、今日は無理無理!」

私は、今まで翔喜からの下校を部活が無い日以外は断ったことがない。

でも今日は特別。

私が翔喜との下校を断った理由はただ一つ。

放課後の自分の教室で絶賛片思い中の斎藤月希先輩にラブレターを書くからだ。
なんで、教室かと言うと、

『放課後自分の教室で好きな人の席と同じ席でラブレターを書くと好きな人と付き合える。』

というおまじないを昨日ネットで見つけたからだ。

だから、今日はその方法でラブレターを書いて...。
むふふ...斎藤先輩と〜お付き合い出来たらな〜と...♥

そんなことを考えていたら思わず口がゆるくなってニヤニヤしていたらしく...。

「梨絵...お前何ニヤニヤしてんの...正直いって気持ち悪い...。」

翔喜に言われてしまった。

「あ、え?ちょっ気持ち悪いってなによ!!」

翔喜との、会話はこんな感じの。男女の性別なんて関係なく気楽に話せるけど...。私は嫌い。めんどくさいし!

授業中は全く頭が回らなくて。
いつの間にか、
勝負の放課後...。

「よし、誰もいない...。えっと斎藤先輩と同じ席順の人って誰かな...」

隣の教室から廊下まで誰もいないか確認した。
もう、斎藤先輩の席はチェック済み。

ゆっくりと足を進め、斎藤先輩と同じ人席順の人の机の前まで移動する。

斎藤先輩の机ではないけれど凄くドキドキする。

顔が熱くなってくるのがわかる。
心臓がドキドキする。

そして、斎藤先輩と同じ席順の人の机の前に立った。
椅子に書いてある名前を確認する為にゆっくり視線を椅子にもっていき確認する。

『上野 翔喜』

結構綺麗な字で書いてある。
名前は、結構かっこいいんだよな〜って...。

「斎藤先輩と同じ席順の人翔喜かよ...。
なんか、運気下がった気がする...。というか、ずる...。ま!いっか!か、書こう!えっと〜」

『月希先輩へ
私の事知らないかも知れませんがずっと月希先輩のこと見ていました。...』

「え、なんて書こ...。」

緊張のせいか、手が止まってしまった。

普通なら伝えたいことがどんどん思い浮かぶのに...。

続きの文を考えていたその時...。


教室のドアが空いた。

ガラッ──

「あー、最悪だ忘れ物しちまった〜......あれ?梨絵?」

誰?え?

「...え?」

恐る恐る、教室の入口を、見る。
そこには、目に少しかかった黒髪で
細くて、身長が高い...。

翔喜がいた。

......最悪だ。
翔喜の、机で斎藤先輩のラブレター書いてる所に翔喜が現れた...。

なんという、嫌な偶然。

というか、翔喜帰ったんじゃなかったの...?

「え、お、おまえ、俺の机で何してんの?」

嫌だ...。穴があったら入りたい...。

「えっえっと〜...ななな、何でもないよ!じゃねっ!」

「は?ちょっ、おい!」

翔喜が手を伸ばしたように見えたが、
そんなの気にせず走った。
ひたすら。
家に向かって走った。
早く帰りたい。
翔喜の顔を見れなくなっちゃう。

私は逃げた。
変な誤解されるのが嫌で逃げた。
最悪だ。

「翔喜...。ぜったい不自然に思っちゃったよね。」

走って走ってやっと家に帰った。

そして、自分の鞄の中から書きかけのラブレターを取ろうとした...。

「あ、れ?ない...もしかして教室に忘れた?え、どうしよう...」

私が走って教室を出たあと少しの時間は教室にいたはずだ。
だから、教室に私が書いていたラブレターが落ちていたら...。

絶対に見られていた...。

翔喜に見られるのは嫌だった。

私は何度もカバンを引っくり返して
確認したけれど見当たらなかった。

「やっぱり、教室かな...。どうしよ、翔喜に見られたら...。本当に合わせる顔なんてないよ...。」

一緒の下校を断ってラブレターを、書いていたなんて知られたくなかった。

「は〜...どうしよ、神様は私の恋をやめた方がいいと伝えているのかな...?」

そんなの、分かってる。

だって、校内1のイケメン...でモテる。

そんな人と私がつり会えるわけない...。
でも、夢くらい見させて...。

気持ちだけでも、伝えたい。
手紙読んでもらえなくて良いから。

私からの手紙を見てほしい。
持ってほしい。

そんなことをベットで寝っ転がりながら考えていたらいつの間にか寝てしまった。