2人が黙り込み、少しして悠琉は戻って来た。
戻って来た悠琉に、美陽はベンチから立ち上がって駆け寄る。
悠琉に見せる美陽の笑顔に楽は不思議と苛立ちを覚えた。

「何で…」

楽の呟きが聞こえたのか、悠琉も美陽も楽に目をやる。
楽は悔しそうな涙ぐんだ声で言った。

「何で…!お前なんか人気者で、女の子なんか選り取りだろ!何で美陽なんだよ…っ。…俺の方が先に好きになったのに」

最後の方は声が小さくなってしまった。
悠琉は真っ直ぐ楽だけを見据える。
悠琉は少し寂しそうな表情をした。

「色んな人が俺を見るけど、それは全部外見であって中身を知ろうとしてくれる人なんていなかった。…だけど、美陽は違った。それだけじゃなくて、俺も美陽を知りたいと思った。出会った瞬間に惹かれたんだ」

美陽も真剣に話を聞く。
楽の頬に一滴の涙がつたう。

「出会うのが先か、想うのが先か。競うのはそこじゃなくて、もっと別のところ…だと俺は思ってる。何て言葉にすればいいのか分からないけどね」

悠琉は笑って見せた。
楽の中で思い出される美陽とのこと。
楽はハッと息で笑う。

「美陽は…っ」

名前を呼んで言葉に詰まる。
何も聞けない。
聞いてしまったら終わりのような気がして…。
楽はまだ諦めきれなかった。