美陽達の通う学校の文化祭は地域参加型で、誰でも入れるようになっている。
それに加え、秋のオープンスクールもやっているため大賑わいだ。

「すごい、人がいっぱいいる…」

窓の外を覗くと酔いそうになるほどの多さだ。

「次沢さん、注文入ったよ」
「はーい!」

料理上手の美陽は裏方で仕事をしていた。
お客さんの帰り際に渡しているのも美陽が作ったクッキー。
美味しいと評判だ。

「少しくらい、休憩して?」
「うん、そうさせてもらう。ありがとう」

美陽はクラスの女子が渡してくれた水を受け取る。
裏方衣装のまま廊下に出た。
美陽は色んな出店を見回った。

「あれ、美陽?」
「…?」

声に気がついて美陽は振り返った。
そこには文化祭を満喫している格好をした束李が立っていた。

「束李!」

美陽と束李は互いに駆け寄る。

「めっちゃ可愛い!え、クラスは何してるの?」
「和と洋を掛け合わせた喫茶店」
「いいなぁ…行ってもいい?」
「うん!どうぞ」

束李は美陽の腕を引いて美陽のクラスに向かう。
美陽は抵抗なしについて行くことにした。
教室内で束李はずっと騒いでいた。
クラスの人が時間を作ってくれたのか遊びに行っていいと美陽に伝えた。

「本当にいいの?」
「うん!あとは任せて」
「あ、ありがとう」

美陽は束李に連れられて校門まで来た。
束李は辺りをキョロキョロと見ている。

「どうしたの?束李」
「んー…知り合いがね。あ!来た」

束李は目的の人を見つけたのか大きく手を振った。
するとそこには…。

「お母さん!?」
「やほー!」

来れないはずの神楽がいた。

「束李ちゃんから連絡をもらってね。仕事放って来ちゃった」

美陽は何だか言葉では言い表せない気持ちになる。
しかし、すぐに考えるのをやめて楽しむことにした。

「お母さん、楽しんでいってね!」

美陽がそう言うと美陽の携帯が鳴り出した。
クラスの女子からだ。

「もしもし」
『あ、次沢さん!?戻っきて欲しいんだけどいいかな?』
「うん、私は大丈夫だよ」

チラッと神楽を横目に見る。

『本当!?休憩潰してごめんね』
「元々入れるつもりもなかったから、今戻るね」

そう言って通話を切った。
美陽束李と神楽にごめんねと言って校舎に戻った。