夕方、束李は用事があると言って帰った。
美陽は貼り終わったアルバムをリビングで見返していた。

「…これも束李のおかげ、かな?でも、そんなこと言ったら怒られるかな」

美陽は小さく笑う。
昔の写真と今の写真を見比べる。
表情が違うのが良く分かった。

「まだまだ、増えるかな」

美陽は思い出が増えることにワクワクしていた。
心を踊らせていると玄関のドアが開く音がした。
美陽はアルバムを閉じて玄関に向かう。

「お、帰りなさい。お母さん」
「ただいま!美陽!」

美陽の母親は床に荷物を置いて靴を脱いだ。
大きな荷物を美陽に持たせて先にリビングに入った。

「何か食べ物ある?」
「まだ、作ってない。ごめんなさい…」

自分の家なのに、自分の家であるはずなのに美陽は肩身が狭く感じていた。

「謝らなくていいわ。お母さんが着替えてる間に何か作れる?お腹すいたの」
「うん!作るよ」

美陽は母親の荷物を片付けてキッチンに立った。
美陽は泣きそうになるのを堪える。

「泣く場面じゃない…」

美陽がご飯を作っていると、美陽の携帯が光った。
美陽は携帯を取りに行く。

「あっ…」

画面には悠琉さんの4文字。
美陽は1度切ってメールを入れた。

「早く、作り終えなきゃ」

美陽は手抜きをせず手早く作った。

「いい匂い」

出来上がった頃、母親が浴室から戻ってきた。
美陽は携帯を持って2階に上がる。

「お母さん、食べ終わったら流しに出しといて!!」

それだけを伝えて美陽は部屋に籠った。