放課後、束李の部活が終わるまで美陽はしばらくの間行っていなかった図書室に来ていた。
束李のことが気になってしまい、読書に珍しく集中できていなかった。
まだ鳴りも光もしない携帯を握りしめる。
美陽は図書室を出て、自分の教室にいることにした。
教室の時計は午後5時を過ぎたところ。
携帯を見つめていると、束李から電話の通知が来た。

「もしもし、束李?」

電話の向こうにいる束李は少し涙ぐんでいた。
話せない状況なのか、代わりに束李の隣にいたらしい龍月が電話に出た。

『あ、次沢さん?俺龍月だけど…付き合うことになったから俺達』

そう言って電話の奥の方から泣いている束李を慰める龍月の声が聞こえる。
美陽は電話を切らずにいた。
また、束李に電話が代わる。

『…っ美陽?私、頑張ったよっ…!』

美陽は微笑んで笑って言った。

「おめでとう、束李。頑張ったね!」

電話の向こうで束李が大きく頷いたのが分かった。
美陽は胸をなでおろす。
緊張が解けたようにストンと肩が落ちた。
2人は一緒に帰ると思い、美陽は「バイバイ」と言って電話を切った。

「私も帰ろ…」

美陽は自分の鞄を肩にかける。
教室の後ろの出入り口いから出ると、教室前に悠琉が立っていた。

「…一緒に帰ろ」

部活終わりの悠琉は少し汗のにおいがした。
美陽は嬉しそうに笑って頷き悠琉の隣を歩く。

「聞いたか、2人の話」

悠琉が言っているのはきっと束李と龍月のことだろう。

「うん、なんかこっちまで嬉しくなっちゃった」

美陽は悠琉に言うと、悠琉も俺もと頷いた。
色んなことが落ち着いてきた頃。
3年生は部活引退で束李が寂しそうに美陽に言う。
このまま平穏が続けばいいと美陽達4人は思っていた…。