美陽と悠琉が告白してるとき。
一方その頃、束李は暇そうに美陽を待っていた。

「美陽、まだかな~」

中学の頃の友人にまで連絡を取っていた。
携帯の電源を切って机に顔を伏せる。

「暇なんか?勉強しないの?」

美陽と束李の教室前を通りかかった龍月が教室に入って来た。
束李は体を起こす。

「葵井先輩こそ、勉強しなくていいんですか?」

束李は自分の気持ちに自覚してから、龍月に対して少し冷たい態度をとってしまっていた。
龍月の眉間にしわが寄る。
龍月は束李の席の右隣に座った。

「俺はやればできる子だから今は大丈夫なんですー」
「そう…ですか」

束李は泣きそうになるのを堪える。
隠すために机に伏せた。
龍月は1人話し始めた。

「…何で最近俺を避けてるの?」

束李はギクリとしたが、反応はしなかった。
龍月は続ける。

「俺の事…嫌いになった?」
「そんなことないっ…です」

束李は勢い良く立ち上がり、冷静になってまた座る。

「よかった~」

龍月は本気で安心しているようだ。
違いますと束李は小さく言った。

「違いますけど…」

そこまで言って束李は口を閉ざした。
龍月と束李の間に沈黙が生まれる。
2人が見つめ合っていると、美陽と悠琉が教室に入って来た。

「お待たせ束李!」

美陽が声をかけると束李は鞄を持って席を立った。

「ごめん美陽。先に帰るね」

そう言って束李は足早に帰って行った。
美陽は束李が走って行った廊下を見ていた。
悠琉は龍月に近づき聞いた。

「何かあった」

問いかけるように悠琉は言った。
龍月は悲しそうな笑みを浮かべる。

「俺、失敗したかもしれない」

そう言って龍月も帰って行った。
美陽は悠琉に駆け寄る。

「大丈夫かな…」

美陽は心配そうに呟く。
悠琉も同じことを考えていた。