午前中は学年競技で終わった。
美陽と束李と龍月と悠琉は美陽が持って来たお弁当を体育館の中で食べていた。

「美陽~…」

束李はおかずを持ってじっと睨みつける。
美陽は吹きそうになるのを堪える。

「入れたでしょ…、私が嫌いな物…」

束李はしょぼくれながら口の中に入れる。
泣きながら美味しいと食べていた。

「運動するんだから、好き嫌いはダメだよ束李。バテられたら困るから。はいこれ、いつもの!」

美陽はクーラーボックスから冷えたボトルを取り出して束李に渡した。
束李はまだ泣いていた。
泣く束李の涙を龍月が自分のタオルで拭った。

「まったく、上田。食べるか泣くかにしなさい!」

そう言う龍月が親のように見えた。
悠琉は笑っている美陽に話しかける。

「何で上田さん泣いてるの?」

美陽は悠琉に説明する。

「束李は好き嫌いが激しいから、こういう全日動くときバテ易いんです。だから工夫して束李の好きなものに嫌いな野菜を入れてるんです」

美陽なりの心遣いだ。
しかし束李はまだ美味しいと言いながら泣いている。
龍月も拭くのに疲れたようで、食べることに集中した。

「次沢さん、すごいね。この中に野菜が入っているなんて」

龍月は疑いながら口に含んでうまいと叫んだ。
束李が泣きながら龍月に話しかけた。
束李はご飯が終わる頃に泣き止んだ。

「そう言えば、次沢さん。リレーにも出ないの?」

悠琉が食後のお茶を飲みながら言う。
美陽は片づけながら「はい」と答えた。
美陽がお弁当を片づけに体育館を出た。
悠琉は呆然と外を見ていた。

「勝谷先輩、美陽と付き合ったりとかしないんですか?」

悠琉の隣に束李は座って話しかけた。
悠琉を挟むように龍月も悠琉の隣に座った。

「次沢さんといい感じじゃん、悠琉。」

2人に挟まれ、2人の質問攻めに悠琉は戸惑う。

「そんなことないよ龍月、上田さん」
「でも、噂になりましたよね?4月に」

束李が言うと龍月はうんうんと頷く。

「気になったってだけだよ。次沢さんは…俺とは違うし」

悠琉は自分で言いながら自分でダメージを受けているように見えた。
束李は悠琉を煽るように言う。

「そうかもですね、今まで先輩とかと話したこともなかった美陽ですからね。珍しいのかもしれません。」

束李は少しきつめ言う。
それを龍月は止めようとしたが、束李は続けた。

「だけど、自分の気持ちに自信がないのなら早いこと自覚した方がいいですよ…。私達1年生と、先輩達3年生とはもう1年もありませんから」

束李が立つのと同時に美陽が戻って来た。
束李は美陽と話している。
悠琉はまた俯いた。
龍月は俯く悠琉に言った。

「1年しか一緒には過ごせない。けど、出会えたから…。これからゆっくり考えればいいさ」

4人は揃ってグラウンドに戻る。
美陽だけ本部に、後の3人は連合の集合してる場所に行った。
午後からはリレー祭り。
美陽は家から持って来たビデオカメラを小さく構えた。