「ノエル」

修一郎さんがずんずんと私に近付いてきていつものように私に手を伸ばすのを見て私は反射的に後ずさる。

私に伸ばして届かなかった手をギュッと握りしめて少し傷ついた表情をした修一郎さんを見て私も胸がちくっとした。

修一郎さんはそれ以上私には近付かずその場で頭を下げた。

「ノエル、昨日は本当にすまなかった。酔ってキミを傷つけて・・・迷惑をかけた」

「あの、私は大丈夫ですから。修一郎さんは何も気にしなくていいです。それより、午後からお仕事ですよね。シャワーを浴びてスッキリして支度をしないと」

修一郎さんに向かって微笑んでみせた。

私の言葉に修一郎さんは大きく目を見開いた。

「大丈夫って・・・」

「ええ、大丈夫ですよ。傷もたいしたことありませんから。彼女だってわざとやったわけじゃないはずです。気にしなくて大丈夫です」

「傷のことだけじゃなくて俺はノエルに謝らなくちゃいけないことがあるし」

「ですから、修一郎さんが私に謝ることは何もありませんよ」

私は口角を上げて微笑み努めて穏やかに声を出した。

「そんなはずないだろっ!」

いきなり修一郎さんが大きな声を出して私はビクッと身体を震わせまた一歩下がった。

「修一郎!」

愛理さんが厳しい声を上げた。

修一郎さんはうなだれ、私は昨夜のようにサッと近付いてきた愛理さんの背後に隠された。

「ノエル、本当に悪かった。昨日、真人たちに散々飲まされてしまって途中から記憶がないんだ。送ってくれた女がいたって聞いて驚いた。しかも、俺たちの部屋にまで来たって聞いて血の気が引いた。それが誰なのか大体の見当はついたからこれから何があったのか確かめるよ」

私は愛理さんの背中で聞いていた。