「でも…。」

「いいから。もうこのマンションも出よう。着替えを持ってきて。私のマンションに行きましょう」

え?

「でも、泥酔状態の修一郎さんに何かあったら…」

私が戸惑っていると有無を言わせず私の背中を押した。

「じゃ、専務秘書の守さんに責任もってここに泊まってもらうから」

それでも私が動けないでいると、愛理さんはため息をついた。

「ノエルちゃん、そんなに傷付いてるあなたをここに置いてはおけないわ。もう着替えなんて買えばいい。何も持たなくていいから出るわよ。守さん、後はお願いね」

そう言って強引に私をマンションから連れ出した。

お義兄さんは私たちを笑顔で送り出す。

「専務は明日も仕事ですから。しっかり朝叩き起こします。もちろんノエルちゃんは出勤しなくていいからね。土曜日なんだから。うちの奥さんのお相手をよろしく」

わざと軽い調子で話してくれたのが余計に辛い。


そうして私は部屋着のまま何も持たず愛理さんと二人で愛理さん夫妻のマンションに向かった。